DVは暴力よりも暴言の方が危険であることを明らかにした心理学の研究
DVは身体的な暴力や性的な暴力といった身体的な暴力のイメージがあって言葉の暴力といった精神的な暴力のイメージは最近まであまりなかったように思います。
しかし、
実際には身体的な暴力はなかなかありませんが
言葉の暴力は結構ありそうです。
「彼氏、彼女のモラハラがひどい」
「一緒にいると傷つく」
そんな人も多いのではないでしょうか。
さらにDVというのは多くの場合、
暴力だけを扱われて終わってしまいますが、
現実には暴力の後に与える影響まで考えなければいけない問題です。
そこでDVとその後の影響まで調べた2018年の研究を今回は紹介します。
これを読んで
今、恋人がいる人はより良い関係を築けるようなアドバイスになりますし、
今、恋人からのDVに苦しんでいる人はその状況を客観的に理解できるようになりましょう。
ぜひ最後まで読んでみてください。
調査の概要
大学生332名を対象に
自尊心、恋人からの暴力、支配されていると感じたことがあるかといったことを調べ分析しました。
また、この研究では暴力を
・精神的暴力
①束縛「他の人間関係から切り離す暴力」
②侮辱や見下し「相手を否定、無視、馬鹿にするなどして貶める暴力」
・身体的暴力(脅迫も含んでる)「直接危害を加えるわけではないが強迫してこわがらせる暴力、殴る、蹴るといったいわゆる暴力」
・性的暴力
以上の大きく3つ細かく4つに分けています!
調査結果
DVの被害者は女性という誤解
DVの経験率は
女性では69.29%
男性では85.08%に上っていました。
「精神的暴力」は多くのカップルに見られ、「身体的暴力」は比較的少なかったのですが、「精神的暴力」と「身体的暴力」は共に男性が女性より受けていることがわかりました。
ただ唯一、「性的暴力」だけは男女で違いがないことが明らかになりました。
暴力は支配に変わる
「恋人に支配されてる感」は暴力行為を受けた経験のある人がない人より高かったのです。
さらに男女ともに「恋人に支配されてる感」が自尊心を低めることがわかりました。
男性のほうが身体的、精神的な暴力を受けているのに、支配されている感は男女ともに同じだったのは何とも不思議なところですな。
これについては後程考察します。
女性の自尊心を傷つける暴力
また自尊心は身体的暴力を受けた女性が低いという結果がでました。
ここでもまた、男性が女性より低いという結果はありませんでした。
女性は身体的な暴力で傷つくのに、男にそれが見られないのは、単純な「筋肉、体格」といったことで実際に男は大して痛みを負ってないってのも考えられますね。
本当の被害者は男?女?
今までの結果をふまえると
暴力をより頻繁に受けているからといって自尊心が下がったり、支配されていると感じるようになるかはまた別である。
そして、男性は悪影響を受けにくく、女性は悪影響を受けやすいということがわかります。
女性のほうが自尊心に影響が出やすかったり、支配を感じやすい理由の一つは男性に比べて女のほうが恋人に影響を受けやすいからではないかと考えられます。
当ブログでも恋人ができることによる影響が大きいという研究は何度も扱っているのでこれは1つの理由になると思います。
またこの研究ではまた別の考察がされていました。
「男性は精神的暴力に愛情を感じやすく自分を束縛する行為は暴力ではなく愛されている証拠として受け止めることがあるのです。
この研究でも男性は精神的暴力の束縛を受けるとむしろ、「恋人に支配されてる感」が減っていました。」
つまり束縛されると顔色をうかがうことなく、自由にふるまえるということがあるのです。
というわけで男性は悪影響が出にくいみたい。
男性のほうが悪影響は少なくとも、被害の数は男性のほうが多いわけです。
だから一概に男女どっちの方が被害が大きいとみなすべきではない問題なんだと思います。
性的暴力が自尊心を高める??
これはかなり意外だったのですが
「身体的暴力」は支配されてる感を高めず、
女性の「支配されてる感」を高めるものは
「侮辱や見下し」といった「精神的暴力」と
「性的暴力」でした。
しかし「性的暴力」は女性の自尊心を高める効果もあったんです。
性的暴力は氷山の一角にすぎない
そしてこの研究では
性的暴力を受ける人は男女ともに、他の暴力行為を受けやすいこともわかっています。
ということは
性的暴力を受ける人は他の暴力も受けていて
その暴力は恋人に支配されてる感を高めて、
その支配感は自尊心を低くするわけです。
つまり、性的暴力を受けている人は間接的に自尊心が低くなっている可能性が高いのです 。
ただ上記の通り「性的暴力」には自尊心を高める効果もあります。これは「自分の魅力」に自信を持てるようになるということでしょうが
じゃあ自尊心は上がるのか下がるのか、
どっちなんだって話になると思います。
しかし、残念ながら性的な問題はカップルの間では非常に複雑で、解釈も難しいところです。慎重に考えていく必要があり、現状はよくわかっていないみたいです。
男も女も支配は支配
見下しや侮辱といった精神的暴力と性的暴力が男性の「恋人に支配されている感」を高める点は女性と同じでした
まとめると、この研究では男女ともに身体的暴力は恋人による支配されている感を高めず、自尊感情を低めることもありませんでしたが、女性の自尊心だけは低いことがわかりました。
ただ他の研究を見てみると男性も恋人から身体的暴力を受けることで負の影響を受けるという結果もあるため、身体的暴力のレベルや関係性、期間といったことも考えなければ何とも言えないので研究が進まないとまだなんともいえないところみたいです。
まとめ
・DV被害は男性に多い
・男は強く問題になりにくい
・暴力は支配に繋がる
・特に精神的暴力、性的暴力!
・支配は自尊心を下げる
最後に
この研究では、最後のほうでまだよくわかりません。
みたいなことが増えてしまったのですが
この研究の最も重要だと考えられるポイントをこの研究の著者はこのように述べていました。
重大さが理解されやすい身体的暴力よりも,否定,無視,馬鹿にされるといった,どちらかというと些細と見なされがちな精神的暴力の方が男女とも負の影響を与えていたことは注目すべき結果である。
このように、一見軽視されがちなところに恋人とのすれ違いや関係への不安といった問題が起きてくるのです。
以前紹介した研究でも日常的なコミュニケーションの重要性について書きましたが、「最近、恋人とうまくいっていない」
もし、あなたがそう感じるとしても、実はそれは「浮気」みたいなわかりやすい問題があるわけではなく、意外と日常の些細なところに問題が潜んでいたりするもんです。
特に男性は関係が長くなってくると、安心してサボりやすくなってしまいがちです。
言葉遣いや、好きな人を大切にする気持ちをいつまでも持ち続けないといけません。
お互いを応援し合えるカップルを目指しましょう!
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参考文献
上野淳子・松並知子・青野篤子(2018).大学生におけるデートDV被害の男女差―恋人による被支配感と自尊感情に与える影響― 四天王寺大学紀要,66,91-104.